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札幌学生対校演劇祭 第14章 審査員講評

特別審査員の方からいただいた講評を掲載しています。(五十音順)

井上悠介 さま(きっとろんどん)

 実行委員の皆様・それぞれの団体で芝居に関わっていた皆様、大変お疲れ様でした。会場こそサンピアザ劇場から BLOCH に代わりましたが、久しぶりに対校祭の空気を味わえて楽しかったです。全団体 2 回とも観劇させていただきました。
 審査する立場になって初めて見えてくる気付きもありました。そんな観点から講評を書いていけたらと思っています。が、自分は特に審査員からの賞は貰っていないのでそういう人間が言っていることだと思って、糧になりそうなところだけ抽出して気に食わない部分は聞き流してください。審査って結局は好みの順位に理屈っぽい理由を付けて正当化しているだけだと思っていますので、審査員(今回は観客投票で最優秀賞を決めるので当日のお客さんも)が代われば別の結果になる可能性もあります。
 改めて皆様お疲れ様でした。どんどん北海道の学生演劇を盛り上げていってください。そして、余力があれば学生合同演劇祭も復活させてください。応援しています。


●北海学園大学演劇研究会「スクリュードライバーズ・ゴースト」
 相方が死んで周りの人間は乗り越えろと言ってくるが本人としては乗り越えられないというオチ(だと解釈しています)は、個人的に好印象でした。『勝手に人の死を乗り越えて強くなってんじゃねーよ』と思う物語がたまによくあるので。
 R1 一回戦の会場はえらい空気になっていそうですね。次の出番のピン芸人がネタをやるシーンまで観てみたくなりました。
 ちゃんと漫才に真っ向勝負しているのも好印象でした。急に相方のババアを殺しに行こうとするくだりが横暴過ぎて笑いました。『売れるまであと一歩』という設定の漫才師なので、BLOCHが揺れるほどウケていたら話の説得力が更に増したかもしれないですね。
 幽霊のシーンは大体そうなのですが、特に相方の家でマネージャーや彼女との会話を覗き見るシーンは、折角『覗き見る』という状況が九十九君と観客でシンクロしているシーンなので、『見てはいけないものを見てしまっている』という方向でもっとドキドキしたいと思いました。あと、下手側の客席からだとワンシーンしか出番の無い落語家の彼の顔が全く見えないのが勿体無く感じました。
 『浅草キッド』感が全体に漂っているのが気になりました。「設定」「キャラクター」「構成」のうち二つが同じもしくは似ていると、人はパクリと認識するという説を聞いたことがあります。この芝居で言うと、「設定(江戸弁・芸人界隈)」「キャラクター(主役がブラックな漫才をする漫才師)」が似ているので、浅草キッドが好きなのかなあ、と思ってしまいました。パクることは別に問題ではなくて、観客・審査員にそう思われてしまうのが損だと思っています。もしそこまで同じにするなら、『浅草キッド』を客が知っている前提にある、もしくは『浅草キッド』より面白くなければ、どうしても評価は低くなってしまうと思います。
 また、こちらは偶然かもしれませんが、芸人の相方が死ぬという点では、漫画の『べしゃり暮らし』でも似たようなシーンがあったなあと思いました。死んだ方が幽霊になってはいませんが、残された相方に焦点が当たるという部分は同じです。
 審査するという立場から観ると年上の人が得意そうな題材なので、『俺の方が詳しい!』って要らないマウントを取られてしまいそうで勿体なく感じました。自分も学生の時は『うるせえ』って思っていましたが、学生に対して勝手に大人は、若者ならではの題材・視点を求めてしまうようです。なので、北海道とか沖縄が舞台の方が良いんじゃないか、とか、学生お笑いや今の時代っぽい尖り方をしている芸人の設定の方が良いんじゃないか、とか思ったりはしますが、賞レースとしての見方なので、気にせずやりたいことをやるのが一番いいと思います。お疲れ様でした!


●演劇集団空の魚『喫茶店 DE 強盗』
 既存脚本で W キャストなんですね。2 パターンとも観ましたが、一般的に言う演劇のクオリティとはまた違う方向で、『優しい世界』って感じの不思議な一体感があって、会場も暖かく笑いも起きていました。既存脚本だとどうしても審査が難しくて(物凄く面白い脚本を持ってきた時にそれを評価してしまうと、今後つまらない大会になってしまうという危惧があって)、自分個人としては審査対象から外れてしまうので、空の魚 OB としては来年以降オリジナル脚本で挑んでくれると嬉しいですね。
 映像が残っているなら、『ここをもう少しこうすればより面白くなりそう』とかを、台詞の言い方・立ち位置・ボリューム・衣装・小道具等々、多角度からの視点を持って観て意見を出していって、それを実践するにはどうすれば良いのかみんなで考えていってもう一度やってみると、サークルでしか出来ない勉強の仕方が出来て、楽しそうでいいなーとかつてのサークル活動に想いを馳せました。
 もし演劇が楽しくなってきたなら、サークル活動の一環で芝居の DVD をみんなで観たり、観に行ったりして、感想を話し合ったりするのも良いと思います。
 元所属サークルの芝居を観ることが出来て感無量でした。どんどん規模を大きくして、セツルやカペラ、MOVE を超える、教育大を支配するようなサークルにしてください!


●23Hz『アンビバレンス』
 トランスジェンダーの主人公と母親の関係性を断片的なシーンの羅列で描いていく作品。相手役の田村さんが友人と母親の二役を切り替えながら進んでいくのですが、抽象的な舞台セットも相まって何をしているのか分かりにくくなりそうなところを、分かり易く大きく演技を変えるのでなく、さりげない台詞や挙動で観客を置いて行かないよう作られているのが、とてもスマートで好印象でした。抽象的舞台で陥りがちな独りよがりな芝居で無いことが序盤の方から分かったので、安心して観ることが出来て良かったです。
 個人的に気になったのは、母親のトランスジェンダーへの価値観です。娘がトランスジェンダーを告白した際に母親は頭ごなしに否定するのですが、それが十年くらい前の似た題材の作品みたいだな、と感じました。全体的に母親が話を進めるための最短みたいなキャラ・台詞に見えてしまったので、そこにオリジナリティーというか人間味みたいなものが追加されるとこの作品の魅力が倍増すると思いました。
 俳優賞&最優秀賞おめでとうございます。よりブラッシュアップして全国の舞台に万全の状態で挑んでください。応援しています!


●我等、敵モドキ『惜しまれ応援』
 最初のダンスのレベルが高くて、ちゃんと応援団に見えたのが素晴らしかったです。場転時にも演出がつけられていて、エンタメ精神に溢れていて好印象でした。ギャグも面白くて会場が盛り上がっていました。3人とも芝居が上手でした。俳優賞の中禰さんは顔・表情がずっと面白かったです。おめでとうございます。
 1回目観た時はそこまで気にならなかったのですが、2回目観た時に団長の髑髏愛羅(漢字で書くと画数多すぎてより面白いですね)が、そりゃ辞めるよなってくらい可哀相に感じました。エピソード的にいい人っぽい印象だったので、学生生活の生き辛さみたいな不条理を感じました。実はこれ、物凄く後味の悪い話ではないですかね。髑髏さん含む4人のキャラが魅力的だった故、同期の4人が仲良くしている未来を望んでしまったのかもしれないです。
 充分面白くて評価されているとは思うのですが、台詞と演技がとても面白いので更に、分かり易く構成の技術みたいなものを見せつけるような脚本をやったら高い評価を得られそうだなと思いました。もしくはプロット・あらすじ・発想だけでもう面白いみたいな。
 構成で言えば、商業的かもしれないですが3人のエピソードが集約されて最後のエピソードに関わっていくみたいなのだとかですかね。勢いがあるのに緻密!みたいな評価を目指すのも一つの道かもしれないです。御三方とも才能があると思うので是非何かしらになってください。応援しています!


●劇団しろちゃん『わかんない。けど、』
 どの部分を切り取ってもクオリティが高くて面白かったです。塾の先生と姉ちゃんがいい人ぶっているのに、なんか薄ら下心ある感じで気持ち悪いのが好みでした。主人公役の岩崎さんもちゃんと役柄を演じ切っていて説得力があり良かったです。会話も面白かったと思います。主人公がいじめ加害者かもしれないというミスリードのさせ方など構成の技術も感じました。ラストは姉ちゃんのエゴを描いた作品だったという印象だったのですが、それが好みでした。 
 リアルな世界観の話で、登場人物が4人しかいないからこそ、偶然入った喫茶店で働いていた笹木が、話を進めるために動く便利屋に見えて勿体無く思えました。しかも、個人的な印象としてはどうしようも無いいじめ加害者なので、絡んでくるとムカつくという。彼も彼なりの何か同情できるように見えたら話により深みが出たかもしれないですね。
 自分は他人事として楽しく観ていましたが、センシティブで身近な題材故、好みは分かれるのかもしれないです。気にせずクオリティの高いお芝居を作ってください!


●北星学園大学演劇サークル『妖し、努々、逢い欺瞞し』
 体調不良で不参加になってしまい残念です。脚本は渡されていたので拝読させていただきました。無茶苦茶スケールが大きいですね。妖怪の説得力と迫力をいかに出せるかが鍵になりそうですね。どう劇を仕上げたのか滅茶苦茶気になります。これは是非観劇したかったです。是非来年以降も対校祭に参加してください。応援しています。

櫻井幸絵 さま(劇団千年王國)

●北海学園大学演劇研究会
村上君と奥村くんのキャラクターが「芸人」という役にぴったりすぎてほれぼれしました。出演者全員が高い発声技術を持っており「喋り」に対する団体の真摯な意識が伺えました。 「芸」への熱い気持ちやコンビ愛にあふれていて、芸能への深い愛情を感じ胸にくるものがありました。「芸と仲間」という熱いテーマをよく描いていたと思いますが、主題がどこかぼんやりして終了した印象を受けました。芸への熱意と九十九くんへの愛が合体して岬くんがセカンドステージの幕を開ける姿を見たかったです。
スクリュードライバーというコンビ名の説明で終った感があり、ラストに向けて小さくまとまった感じがしました。
舞台転換のスムーズさがもうひとつ欲しかったです。視覚効果音楽効果に対する美意識がもう少し欲しい。
キャストは皆、演技力が高く、江戸弁や芸人言葉のむつかしい話術をとてもよくこなしていました。むずかしい演劇に挑戦している分、荒が 見えましたが、そのまま高みを目ざしてもらえればと思います。
田村先輩が、あ、めっちゃこんな芸人の先輩いそう!って感じで良かったです。

・いいと思った役者
村上くん、奥村くん、三井田くん


●演劇集団空の魚
多くの登場人物が事件にまき込まれながら、それぞれの人生を開示してゆくグランドホテル形式の演劇としてよく良くまとまっていたと思います。
俳優の個性をとても良く生かしたキャスティングで、登場人物の1人1人がとても魅力的でした。脚本の力でしょうか、全体に人間への優しさとゆるいユーモアに支えられており、誰も悪い人がいない、観客が力を抜いて楽しめる温かなエンターテイメント力にあふれていました。 転換の上手さや、効果としての音楽の良さも印象に残りました。
「無敵の人」を登場させ、社会性を持たせながら、コメディとして棘なく楽しさに変換してゆくバランス感覚が素晴らしいと思いました。
グランドホテル形式で見るともっと沢山事件が起きて、二転三転してゆくジェットコースターの様なスピード感があればと思いました。パン屋さんの配達も上手く取り込んで、どんどんとんでもない方向に向いながら最後に大団円にまとめてゆければ、いっそう劇に爽快感が出たと思います。

・いいと思った役者
ゆうみさん、DENさん


●23Hz
身体的要素、視覚効果、特に照明の美しさ、タブローの構成など高い完成度があり、演出の尾崎さんの高い美意識を感じて魅せるものがありました。
脚本はミヤザキカヅヒサくんの「117」に酷似 していてちょっと気になりました※。トランスジェンダーの問題をあつかいながら、「母と娘」と云う主題を通した緊密な人間関係が描かれ胸にせまるものがありました。トラスジェンダーと云う社会的な問題を扱いながら、演劇的な創意がちりばめられ、非常に完成度が高い作品でした。俳優のお2人も、濃い人物像を的確に体現していて、また様々な年齢の演じ分けもスムーズで高い演技力がありました。
欲を云えば、トランスジェンダーのゆりなの対峙する開題がステレオタイプであり、個人的な人物像として浮かびあがってこなかったと思います。トランスジェンターらしさではなくらしくなさの方に、その人間の個性が浮かびあがるのではないかと思います。一般的なイメージからもう一歩ふみ込んで取材を通した脚本づくりを期待します。
※審査員の井上くんと話して、あの方法論はジャンルとして成立していると聴いて納得しました。

・いいと思った役者
黒瀬さん、田村さん


●我等、敵モドキ
わぉ!めっちゃ90年代だと懐かしさを感じました。仕込みパラシまで計算されていて、歓客への高いサービス精神を感じました。
様式的な団体プレーがよく訓練されており、ネタも面白く俳優1人1人の力量もとても高いと感じました。
衣装や小道具、照明、SFなどしっかり仕事をしており作品としての完成度は抜群に高いと感じました。
やりたい事に対する至らなさが無く、観客の視点から客観的に作品作りを行える知性を感じました。
ライバル心と敵対意識というサークルの人間関係はリアルだし、それを応援しようという結末は人間愛にあふれ爽快でした。応援団という伏線も上手く回収しており見事です。
とっても面白かったです!

・いいと思った役者
菊地くん、櫛引さん、中禰くん


●劇団しろちゃん
緊密な対話が高い演技力に支えられ、非常に魅せるものがありました。
シーンの移り変わりが素晴らしく、視点をスムーズに変化させながらリフレインを加え主題を浮きぼりにしてゆく構成が見事でした。
登場人物をキャラクター化させず現実を生きている人間としてリアリティを持って描いてゆく脚本の力が見事でした。 優しい人々の悪意がにじんでゆく展開もスリリングで息をつめて見る様な緻密さがありました。
ラスト、悪意の声が聞こえなくなり、自分の足で立つくるみのエピソードは脚本として読むと希望が見えますが、空間で演じられるとその部分がささやかすぎて、つきはなしたまま終演した印象を受けました。差しのべた手を引っこめる以上にくるみが自分の足で立つためのエピソードがあれば、劇にカタルシスが生まれたと思います。 バランスでしょうが、希望があわく、弱い人々の悪意の方が印象に残りました。
「上質」という言葉がぴったりの洗練さが全体をつつんでいて、団体としての力量の高さを感じました。

・いいと思った役者
堀井さん、岩崎さん、小岩井さん、岡部さん

納谷真大 さま(ELEVEN NINES)

『スクリュードライバーズ・ゴースト』

ストーリーは捉えやすかったです、が、タイトルとの連動感というのが、少し捻り過ぎているのかも、とは思いましたが、それは私の頭が固いだけかもしれません、作者の方のこだわりだとしたら、それはそれで突き通すべきだとも思います。

私が、俳優であることもあり、「売れる一歩手前の芸人」という役を演じることの難しさを真っ先に感じてしまいました。やはり、ある程度の説得力は必要で、それを劇中の漫才で創り上げるのか、俳優自身のカリスマに委ねるのか、作術としてリアリティが必要だから、難しい素材だなとおもいました、が、演出の方が、「そこは別にどうでもいい」と感じているのなら、私の意見はスルーして大丈夫だとおもいます。

演出的に、もう少しスピーディーな展開の方が、私の好みでした。
演劇的な「しつらえ」やSEや音楽の使い方で、それは可能な気がしました。

登場人物に物語を展開すること以外の役割を与えることがもっと出来た気がしました。
それぞれのパーソナルが絡み合える展開だったとおもいます。

個人的には、浅草的な昔の設定よりも、今の若い世代の芸人の人たちの内面を覗き見たかったです、それが出来る作家能力と、俳優のチカラを感じました。

部屋でのシーンの俳優のナチュラルさは、とても好感が持てましたし、惹きつけられました。



『喫茶店DE強盗』

こういう設定で劇をクリエーションする場合、個人的な見解ではありますが、コントにするのか、リアリティーを追求するのか、ハッキリと大きく舵取りをした方が良い気がします。
私ならば完全なるコントにするとおもいます(そっちの方が簡単だから)が、リアリティーの方で押し通すことも可能だとはおもいます。
その大きな舵取り具合が、少し中途半端だったような気がします。
俳優さんたちのチカラも、演出の方のセンスも、とても良いと感じたので、ぶっ飛んだコントとして、音楽なんかも使いまくって、荒唐無稽な作品にしたのを観たかったです。

飲食店などのシーンで、多発的に会話が起こりうるシチュエーションでの俳優の演技は、とても難しいのですが、取り組む価値はあるとおもいます、今回は「惜しい」と感じました。
セリフを喋る以外の演技は、本当に難しいのですが、トライしてもらいたいです。

大前提として、荒唐無稽な「大嘘」があるので、ディテールの部分での「小さな嘘」は、無い方が作品のクオリティーは上がるとおもいます。例えば、警官のピストルや、喫茶店のテーブルの上の小物など。

演出的な試みは、たくさん感じましたので、次の作品が楽しみです。
既成の戯曲でやる場合の作品選びは、とても重要なので、期待しております。
あ、もちろん、オリジナルなら、それはそれで楽しみです。



『アンビバレンス』

演劇的に、最先端ではないにしても、対校祭の作品の中では1、2を争う、現代的な演劇作品だと感じました。

私は個人的にエンタメ作品を好むのですが、こういう「知の企み」のような作品も嫌いではありません、そういう意味では、ある一定の以上の高いクオリティーの作品だったとおもいます。欲を言えば、その中で「初めての感覚」を与えてくれたなら、それはもう学生作品ではなくプロフェッショナルな作品にまで達していると感じたはずです。
「知の企み」作品は、ある程度、手垢がついてる感があるので、作家、演出家の方の独自性みたいなものの追求は、どうしても必要になるのかな、とおもうのです。

俳優のお二人は、作品の世界観をちゃんと捉え、しっかりと演じてらっしゃったとおもいます、かなりハイレベルだと感じました。

審査の段階で、ストーリーラインの展開が、古いという意見が出ました。
最先端のジェンダー問題は、どうも次の段階になっているようで・・ただ、私はそうは感じませんでした、古いとか新しいの外側に、この作品の面白さがあったようにおもうからです。

タイムを表す、セットはもう少し、ブラッシュアップ出来る気はしました。



『惜しまれ応援』

エンタメ作品が好きな私としては、個人的に楽しめました。
まず掴みの部分をパフォーマンスとして成立させていたのは見事でした。
欲を言えば、パフォーマンスの部分での、俳優のミザンスと照明の演出をもう一段階はブラッシュアップ出来たような気がします。

俳優たちのそれぞれのキャラも際立っていて、三人の役名を覚えてしまいました、これは凄いことだと思います。

三人で、一つのシチュエーションで引っ張っていくのはとても良かったですし、好きでしたし、素晴らしかったです、が、だからこそ、あと一歩、深いところまで掘ってもらいたかったです。シチュエーションコメディーではなく、ヒューマンシチュエーションコメディーになり得た作品だと感じています。

それを一番感じたのが、ラストです。
最後、団長が辞める、という「オチ」は、物足りない感じがしました。
その先に、もう一段階深いレベルがあるような気がするのです。
ただ、それは戯曲の問題で、俳優さんたち、演出は、かなり面白かったです。



『わかんない。けど、』

今回観た作品の中で、最も現代的な作品だと思います。

東京などで、20代から30代前半の人たちが生み出している作品も、戯曲の内容、セットの感じ、俳優の演技スタイルなど、こういうタッチの作品が今は人気があるように認識しています。

そして、今回の作品の中で、最も、作家の方の熱量を感じた作品でした。
きっと、自己の内面を抉っての創作だったのではないか、と、感じるような作品でした。
だからこそ、短編ではなく、長編で観たかった気がしてます。
ある、一人の、個人の、内面を、数十分で表現するのは、大変難しいような気がするのです、が、にも関わらず、後半は少し冗長的に感じましたので、それがこの作品の抱える問題なのかもしれません、詳細な分析は出来てないので軽々しいことは言えないのですが・・。

物語展開として、最初の入り口は、大変面白かったです。
シチュエーション、セリフの置き方、俳優の演技、どれも高い水準でした。
特に、セリフは、作者が試行錯誤して、あの言い回し、あの情報量に精査していったのだろうな、と感じるくらい繊細でした。だからこそ、中盤から、少し息切れした感じがしてしまったのも事実です。前半に比べ、中盤以降のセリフは、物語を展開していく役割がメインになってしまってた気がします。

もっともっと剥き出しでも、大丈夫だと、私は思います。

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